





屋根は、家そのもの
屋根という文字は、屋のてっぺんにあるのに「根」という文字が用いられます。
日本の家の事始は、竪穴住居ですが、この住居は、柱を大地に食い込ませ、草屋根を葺きました。つまり、日本の屋根は、家そのものを表わすのです。
昔の民家はみな近くで得られる材料を用いて建てられました。茅も、近くにたくさん生えていました。伐ったばかりの茅は水分が多いので、冬に枯れたものを集め、春になるまで乾燥させてから使いました。茅は、通気性・断熱性に優れた材料でした。
茅葺屋根の熱容量の大きさを引き継ぐのは、木の繊維断熱材
茅は通気性に富んだ材料でもあります。空気がいっぱいある材料ということです。
その空気層が、断熱に役割を果たしました。夏の日射を受けても、その熱は茅の中に留まり、夜になると宇宙に放射冷却されます。
茅は熱を蓄える屋根なのです。
むかしの茅葺屋根が涼しかったのは、この屋根材の性質によります。
その厚さがそのまま空気層になっていて、屋根の輻射熱が流入しないので、掃出しの窓を大きく開けば、通風によって夏を涼しく過ごすことができたのです。
屋根に籠る輻射熱が部屋に流入しないのは、「木の繊維断熱材」も同じです。
「茅葺の屋根みたい!」と言われる所以です。
夏の屋根の表面温度は70℃
夏の日射を浴びた屋根の表面温度は60~70℃にも達します。小屋裏温度も50℃を超え、その熱が天井に伝わって、じわじわと部屋の温度を上昇させます。
この輻射熱をカットするのが断熱材である筈ですが、熱容量の小さな断熱材だと、天井表面温度は35℃を超えている場合もあります。
熱の到達を遅延させる
下の表をごらんください。木の繊維断熱材は、上面の温度変化が下面に到達するまでの時間を、200mm厚なら8時間、300mm厚なら13時間も遅延させることができるのです。
夜間の宇宙の絶対温度は、マイナス273℃です。昼間、太陽の日射が灼いた地表の熱は、夜間、宇宙空間に放出されて温度が低下します。この状態を放射冷却と呼びます。朝露は放射冷却によって起こる現象です。
室内に到達するのにこれだけの時間がかかるということは、到達する前に、屋根に籠った熱は宇宙に放射し、室内へはとどかないということです。
グラスウール | 木の繊維断熱材 | 木の繊維断熱材 | 木の繊維断熱材 | |
---|---|---|---|---|
厚さ(mm) | 100 | 100 | 200 | 300 |
熱伝導率(W/m・K) | 0.04 | 0.04 | 0.04 | 0.04 |
密度(kg/㎥) | 24 | 60 | 60 | 60 |
比熱(KJ/kg・K) | 0.88 | 2.1 | 2.1 | 2.1 |
容積比熱(KJ/㎥・K) | 24.7 | 126 | 126 | 126 |
㎡あたり熱容量(KJ・K) | 2.47 | 12.6 | 25.2 | 37.8 |
遅延時間(hr) | 2 | 8 | 13 |

西日はなぜ暑い?
夏の間、西壁の受ける日射量は南壁より多く、外壁表面温度は50℃にも達します。この灼け込んだ西壁の熱が徐々に伝わって、うだるような室内の暑さを呼ぶのです。
一日の温度のピークは、地域によって異なりますが、だいたい午後2時前後です。日中、太陽で暑くなった地表や、周囲の建物からの輻射熱が、太陽が西に傾く頃に時間差攻撃で襲ってきます。
西日の熱射がつよいわけではないのです。
もう一つの理由は、部屋の温度自身、西日が傾く頃に高温になることです。
日に照らされたからといって、午前からお昼に掛けては、部屋の温度はそんなに高くありません。建物の表面は日光に照らされて温度が上がりますが、その熱は内部に伝わって拡散します。これはやかんを火に掛けても中の水が直ぐには沸騰しないのと同じです。
屋根面に加え、壁面も木の繊維断熱材とすることにより、その熱容量の大きさを実感していただけることでしょう。
湿式の良さを乾式で活かす
「バウハウス」の創始者として知られるドイツの建築家ヴァルター・グロピウスが、それまでの「農耕的」な住宅に対して、乾式工法を採用することにより、誰もが住まいを不足のないように満たすようにと提唱しましたが、湿式でやれないことを、乾式的にやれないものかどうか。
そこで提案したいのが、木の繊維断熱材です。この材料は、耐震性こそ期待できませんが、調湿性と断熱(蓄熱)性に特に優れ、防音・防火効果を併せ持った材料です。
土壁を用いた伝統的建築の名人として知られる九州・建築工房悠山想の宮本繁雄代表は、予算と工期が合わず、もし土壁でやれなかったとして、理屈が合っていれば次善のものを選択してよく、木の繊維断熱材はその一つではないか、と言われます。
「手の物語」は、この言葉に確信を得て、ここにこの材料を推奨することにしました。
手の物語だけの、密度70kg/㎥
手の物語で扱う木の繊維断熱材は、2018年より生産の始まった55kg/㎥品と、さらなる蓄熱容量・吸放湿性を求めた、独自の70kg/㎥です。
断熱性能はほぼ変わらず、蓄熱容量を大きくし、熱の遅延時間を大幅に長くすることに成功しました。
施工事例




施工のようす
[動画提供:株式会社和秋建設]
木の繊維断熱材規格
WF55-380 | WF55-415 | WF55-423 | WF55-460 | WF70-378 | WF70-415 | WF70-423 | WF70-460 | |
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モジュール | 尺 | 尺 | メーター | メーター | 尺 | 尺 | メーター | メーター |
密度(kg/㎥) | 55 | 55 | 55 | 55 | 70 | 70 | 70 | 70 |
厚さ(d:mm) | 120 | 120 | 120 | 120 | 120 | 120 | 120 | 120 |
幅(w:mm) | 380 | 415 | 423 | 460 | 378 | 415 | 423 | 460 |
長さ(L:mm) | 1240 | 1240 | 1240 | 1240 | 1240 | 1240 | 1240 | 1240 |
入数(枚) | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 |
面積(㎡/梱包) | 1.41 | 1.54 | 1.57 | 1.71 | 1.40 | 1.54 | 1.57 | 1.71 |