一方向性の透湿防水シートと樹脂キャップ付きタッカー

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最近、消臭剤や芳香剤のコマーシャルをよく見かけます。
以前はお部屋の臭いが対象でしたが、急にお布団や洋服に振りかけるタイプや、動きを感じて周囲に振りまかれるなど、新しいタイプの商品が増えています。ホントのところ私は、そういうニオイはあまり好きではありませんが、今後、目に見えないものに対する開発がどんどん進んでいくように思います。
近い将来、NHKの「きょうの料理」も匂い付きになるかもしれませんね。

そんな目に見えないものに、ニオイの他、温度や湿気もあります。
ここのところ、アトピーなどの健康面からも調湿材が注目されていますが、仕上げ材に使う建材だけでなく、躯体や壁、天井など全体が調湿する「呼吸する家」って、気持ちがいいなって思っています。

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そこで、壁の透湿・防湿について、今一度、整理してみたいと思います。

「外皮をぐるっと連続した断熱層で覆い、断面構成は、室内側は湿気を通しにくく、室外側は湿気を通しやすくする」
これが、寒冷地から始まった断熱工法の基本的な考え方です。(その他、気密性能等もありますが、今回は断熱性能に限って)

図①のように、室内側に防湿フィルムを張って湿気が壁体内に入らないようにし、もし継ぎ目やコンセント廻りなどから入った場合は、通気層から湿気を逃がす。そのために外側に、透湿防湿シートを張るというのが、みなさんご存知の一般的な仕様です。

さて、呼吸する家を考えた時、または「木の繊維断熱材」を使ってその調湿性能を発揮させたいといった場合、この防湿フィルムは湿気を通さないのですから、ちょっと厄介モノです。
かといって図②のように防湿フィルムを張らなければ、室内の湿気が壁体内に入ってきて、外側の構造用合板の室内側で結露をしてしまいます。

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この場合は、図③のように、外側の構造用面材を、モイスなどの透湿性の高い面材に変えます。
これにより、湿気が壁体内に留まらず、通気層に逃がすことができます。但しこれは、全国何処でもOKというわけではなく、結露計算をしてOKになった場合に限りますので、注意が必要です。

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この仕様は、冬に限らず、夏の外気が室内より湿度が高い場合においても、図④のように壁の中を湿気が通るので結露の心配はありません。

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では、一般的な仕様(図①)の夏の場合はどうでしょう。
実は図⑤のように、夏において、外気温が高く、室内側が冷房で冷やされた場合、外気の湿気が壁体内に入ると、防湿フィルムの断熱材側で結露をする場合があるのです。
これを夏型結露と呼んでいます。

寒冷地の断熱工法がだんだん南下して、温暖地や蒸暑地でも建てられることが多くなってきているので、この現象は増えているのではと、耳にすることがあります。(ただ、結露は瞬間的に発生しても、時間の経過で乾燥することもあり、即大きな問題に繋がるかどうかは、状況によります)

そこで救世主が、アメリカのダウ社製の「スタイロフォーム ウエザーメイトプラス」という透湿防水シートです。

日本の透湿防水シートは、湿気の移動が2方向性なのに対し、このシートは一方向性です。
すなわち、図⑦のように冬は室内からの湿気は通気層に逃げますが(一般の透湿防水シートと同じです)、夏の場合は、図⑥のように、外気の湿気は壁体内に入らない仕組みになっているのです。これは、表面に特殊なフィルムをコーティングしているかららしいです。
これにより、夏型結露を防ぐことができます。

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『STYROFORM WEATHERMATE PLUS』スタイロフォーム ウエザーメイトプラス

image01アメリカのダウ・ケミカル社製の透湿防水シートです。日本のダウ加工では扱っておらず、輸入品です。数年前から日本に入っており、その頃、ある工務店さんにおすすめしたのですが、巾3mモノしかなかったため不採用になりました。今年のジャパンホームショーへ行ってみると、1.5mモノ、0.9mモノも新しく作られていたので、これなら、施工性もいいと思います。

このシートは、ディンプル(凹凸)加工をした不織布をポリオレフィン系の超薄フィルムでサンドイッチしているということで、日本の透湿防水シートより肉厚で、重ね合わせると摩擦によりずれにくく、気密シートの役割も果たします。
断熱材に繊維系断熱材を使用した場合、室内側の防湿フィルムを気密層としている住宅が多いと思いますが、家の外側をすっぽり気密層で包んだ方が、より連続し明解だと思います。

またこのシートは、透過性があるため下の合板を打った釘頭も透けて見えますので、釘ピッチを確認することが可能です(特に2×4工法の釘は色が違うのでチェックにも便利です)。

気になるのは、価格です。ザクっときいたら、日本の透湿防水シートの約2倍くらいらしいです。
「えっ!高い!」って思われますよね。
でも考えてみると、普通の大きさの住宅で、1軒当たり透湿防水シートの金額は約1万円〜1.5万円くらいと聞きますので、このシートを使っても、3万円くらいで納まるのではないでしょう。(詳しくは取り扱い先に聞いてください)

 

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それから、今年新しく見つけたのが、この透湿防水シートを留める器具で、樹脂キャップが付いたタッカーです。
これは、一般のタッカーと同じように打ち付けるのですが、樹脂キャップとタッカーが同時に打ち込まれ、シートを留めます。
少し手首のスナップをきかせて打つのがコツらしいですが、バチンと打ち付けられた樹脂キャップ付きタッカーは保持力もあり、少ない打数ですみます。
そして、万が一通気層に雨水が入っても、キャップをよけて水が落ちるので、タッカーの穴から壁体内へ雨水が入るのを防げます。

これは、米デュポン社製ですが、現在、アメリカのデュポン社では、このタッカーを使用しないとタイベック(デュポン社の透湿防水シート)は保証しないということになっているようです。

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今回は、ダウ社の透湿防水シートとデュポン社の樹脂付きタッカーという組合せのレポートでした。

【問い合わせ先】
ナータッグ・ビルディングサプライ株式会社
横浜事業所:〒222-0033 横浜市港北区新横浜2-3-4 クレシェンドビル4階
TEL:045-475-0711
担当:小金沢敏明さん
URL:http://www.nahtag.co.jp/

村田むらた 直子なおこ
muranao一級建築士事務所MOON設計代表。
北海道生まれ。室蘭工業大学建築工学科卒業。
寒冷地住宅の研究を経て、システム住宅の開発や工務店の標準化に取り組みながら、家を造る側の仕組み作りをサポートする。

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